東 京 近 郊  の 山  尾 根 歩 き
西 丹 沢 (マイナー尾根2)



エビラ沢

2014年10月下旬
コース記録:  神の川入り口8:20−エビラ沢9:05−キャンプ場10:15−11:00休憩11:15−11:50花折橋(昼)12:10−音久和13:10−青根バス停13:45

 エビラ沢から袖平山北西尾根を登ろうと、神ノ川林道を歩く。
 左下:音久和集落にあるババア宮(バアバア宮、ウバ神) 解説によれば、武田氏滅亡後、武田24将の一人都留城主小山田信茂一族の小山田六左エ門は、小田原北条氏を頼り大月から落ちた。その途中、まず六左エ門が焼山下の西野々で撃たれ、娘の折花姫一行も当時街道だった神ノ川林道にさしかかった際、まずここで姥様が撃たれた。哀れんだ村人が祠に祀ったとある。
 右下:ジジイ宮 次にここでジイが撃たれた。一人になった折花姫を哀れんだ供の者が祀ったとある。『日本山岳史』によれば、最期に爺が一人残される姫に手を合わせ「お可哀相な」とつぶやいたことから、この上の尾根がカワイ(可愛)尾根と名づけられたという伝説もある。





 エビラ沢への入り口が見えてきた(左上)。エビラ沢大滝(右上)。地図によれば左手から滝上に出るはずなのだが・・・。とりあえず、滝見台の左から斜面を登ってみる。2回トライするが、どうみても登れそうにない。というより危険。体の中の危険センサーがピーピー鳴る。北アルプスの大キレットや剣岳より危ない。岩場ではないがずるずるの土の急斜面。滝つぼまでは10mか数十mそこらなので滑落しても死にはしないだろうが、骨折くらいするだろうし。
 あきらめて戻る。水場に、軽トラで乗り付けて大量のポリタンクに水を入れている夫婦がいた。服装から地元の人のようなので、エビラ沢を登る道について聞いてみる。
「ああ、前は木の橋がかかっていた。確か台風だかで流れた。今は登れないんじゃないか?」と言いながら滝見台まで来てくれた。そして滝左手の崖を見ながら、「そこに橋があった。今はない。ここは登れない。水場上の斜面から登ればいいんじゃないか?だけど熊が出るぞ」と笑った。水場の水は、お茶入れや料理に使っている、おいしいよ、でも生では飲まない、と言っていた。
 左下:左手斜面に壊れた木道が見える(その後調べると、確かに古い写真では、この斜面に桟道のような橋というか木道が3段くらい斜めに架けられ、滝上へと登っていた)

 水場裏の山をちょっと見てみる。谷状の人工林から右手の尾根に出ると、確かに踏み跡が続く。ここから社宮寺沢からの尾根に合流、さらにエビラ沢からの道にも合流するのだろう。でもそれだったら、社宮寺沢から尾根を全部歩くほうがよさそうだし、既に10時で今から袖平山へ登りカワイ尾根(北尾根)を下りるのは、岩場があるようなので時間がかかる可能性も高く、秋の短日を考えると厳しそうだ。
 というわけで、鐘撞山(からあわよくば大室山)に切り替え、キャンプ場から鐘撞山登山道へ(右下)。キャンプ場の犬がついてきた。





 右上:折花ルートとの分岐に来た。なんか調子がいまいちで体が重く、スピードも出ない。結構時間かかるな、と一休み。ここで靴を脱ぐと、右足の甲に赤い丸い染みがある。あれ?怪我したのかなと靴下を脱ぐと、ごく小さな丸い跡がある。虫にでも食われたか、それにしては靴下の染みが大きいな、といぶかりつつしばらく休む。ふと見ると、またじわーと出血している。これはおかしい。自慢じゃないが、血はすぐ止まるほうだ。こんな表面かすっただけの傷なら、圧迫止血でたちまち止まるはず。おかしい。このとき、ヒルジン、という言葉が脳裏に浮かぶ。蛭は血を吸うとき、血が固まらないよう、ヒルジンという物質を出すので血がなかなか止まらなくなるという。
 ギョエー、ついに蛭に食われてしまったか。靴の中やあたりを見回すが、蛭は見当たらない。痛くもかゆくもないので、いつ食われていつ消えたのかもわからない。しかしここは西丹沢、蛭はいないはずでは?あーでも焼岳は多いか。ぬかった、ヒル除け塗ってこなかった。エビラ沢あたりか、水場もありぐじゅぐじゅしていたし。ふいてもふいても、血はじわーと染み出してくる。調子いまいちに加え、この蛭騒ぎで一気にやる気が失せ、折花ルートから下り、やまなみ温泉にでも寄って帰ろう、と決める(その頃にはさすがに血も止まっているだろう)。
 崩壊地とかあったが(左下、地図に危険印あり)、蛭のほうがヤバいのでさくさく下る。右下:林道に下りてきたところ





 上:折花神社 折花姫については小山田六右エ門(ここの説明書では左エ門でない)の娘説と平家落武者の娘説とがある、と書いてある。神社は山や旅の安全、家族の安全、今では縁結びや長寿の神様でもあるという。
 ある解説では、折花神社の由来として大月から逃げてきた武田家臣の小山田行村一行は、神ノ川上流長者舎付近に滞在し、鐘撞山に見張りの鐘を置いた。しかし追っ手が迫り、行村は娘の折花姫を逃して戦死、袖平山は姫が袖をヒラヒラさせながら逃げていった山、姫次は姫を従者に渡した場所、あるいは姫が崖に突き落とされた場所という。自害して果てたという話もある。一説によれば姫は十代だった。
 別バージョンの伝説として、『かながわの山 山名をたずねて』などによれば長者舎には金持ちの老夫婦と美しい娘折花姫がおり、鐘撞山に見張り(鐘守)を立てていた。ある日強盗に襲われ、娘は神ノ川に身を投げた。長者夫婦は追手に追われ長者舎に身を隠しており監視を立てていたが、ついに追手に襲われ姫は自害という話もある。
 神ノ川井戸沢の鐘撞山登山口にある説明書によれば、鐘撞山には武田信玄の狼煙台があった。山頂には折花姫奥の院があるという。『日本山岳史』によれば長者の名は天野茂左エ門。こうした長者が襲われ娘が自害の話は、宮ヶ瀬の長者屋敷にもある。(宮ヶ瀬−東峰−丹沢山−戸沢の項のこちら



 右上:大室山が見えます    下:東野への道
 リベンジは下の社宮寺沢−袖平山−カワイ尾根の項で




社宮寺沢−袖平山−カワイ尾根

2015年1月中旬
コース記録:  神ノ川入口8:20−社宮寺沢橋8:55−732ピーク9:35−エビラ沢との分岐コル9:45−11:15岩稜帯(昼)11:25−11:40袖平山11:50−カワイ尾根944ピーク12:45−林道終点13:30−14:10青根バス停

 橋の南から東へちょっと入ったところに道標があり、尾根への踏み跡がある(下)。





 最初は人工林の急坂を登る。作業用なのだろう、道の谷側にガイド木を横たえ、しっかり道普請されている。北の道志方向を振り返る(右上)     左下:732ピーク






左上:左手(東)に、これから下りる予定のカワイ(可愛)尾根がよく見える

右上:このコルでエビラ沢からの道と合流。エビラ沢への道はあるようだ。一説では現在林道取り付きは木道の壊れた滝ではなく、林道脇フェンスから出入りするようになっているらしいが。

尾根道は赤ペンキもありわかりやすい(左)

左下は月夜野あたりだったか

標高800あたりから落葉樹林となり、踏み跡薄くなる







 標高800−900あたりは傾斜もゆるやか、日当たりもよくのんびり歩ける
 右下:露岩帯に出た。岩場ではないが、崩れやすい ここは急斜面



上:袖平山が見えてきた
右:写真ではわかりにくいが最後急坂、ロープが設置されている


左:さいごひと登り
下:袖平山に着いた





富士山や大室山が良く見える 南アルプスも白く光っている
袖平山から北へカワイ尾根を下る
下:カワイ尾根 分岐点には足元に道標がある





 けっこう大きな足跡が・・・
 右上:東に見えるのは焼山の尾根  左下:西に見えるのはさきほど歩いた社宮寺沢からの尾根
 右下:北には東野から上野原がよく見える
 何箇所か支尾根分岐箇所を地図とコンパスでチェックしつつ、さくさく下る





 左上:944ピークのこの尾根は登山道でない警告板 ここからは人工林
 左下のような3つの微妙な尾根のある地形のところで2箇所、わかりにくいところがある。ここは北、北東、東北東に分かれるが(北東に乗る)、道普請してあるので、地図コンパスで方向を見極めつつ(脇へ伸びる作業道に入らぬため)道沿いに進む。





 小沢に木橋がかかるが、どれも折れていたり古くて危なそうなので避ける。途中から脇に新しい林道が延び歩けそうだが、地図どおり山道を行き広場に出た(左上)
 林道途中には、斜面からボロボロ落ちてきた小石や土が林道上にまで溜まった、崖崩れしかけたようなところが何箇所もあった(左下)      右下:上青根の村




伊勢沢ノ頭

2015年1月中旬
コース記録:  玄倉バス停9:15−境隧道10:10−山神峠11:30−伊勢沢分岐12:05−伊勢沢ノ頭12:10−12:55林道出会13:10−13:50大橋(昼)14:00−寄バス停14:30

 左下:玄倉林道から同角山稜方向を望む   右下:ゲート





 境隧道を抜けた左手(川沿い方向)に、山神峠へ向かう道がある(左上)。川沿いの崖を行くざれたトラバース道で、ちょっと危険だ(右上は振り返ったところ)。
 下:トンネル上のヤセ尾根を渡り、まずは山神峠へ





 最初人工林を急登、続いて傾斜がゆるやかになり落葉樹の森、鹿柵脇をさくさく行く
 右上:大垣あたりの平坦な山頂 ここから南東へ直角に曲がると急な下り(左下)、下りた先のコルが山神峠

 下:丹沢主稜方向を望む







 上:山神峠 南西から北東へ抜ける峠越えの道は、崩れて通行止めになっている
 登り返して伊勢沢ノ頭へ





 資材運搬用モノレール脇を歩き(左上)、縦走路に出た(右上)
 伊勢沢ノ頭を越え、南東尾根への分岐に出る(左下)。立入禁止とあるが・・・。地図ではOKのはずなので行ってみる。すると若者がおり、「ここ登山道じゃないこと知っていますか?」と聞く。「知らないで入ってくる人が多いので声かけているんです」境隧道から来て、立入禁止とあったが地図にバリエーションで載っているので来てみた、と言うとなるほど、と言いつつ通してくれた。なんだろう、道迷い防止ボランティアかなあ、と思いつつ下る。   右下:尾根のようす





 道は非常に明瞭。さきほどの理由はすぐにわかった。道なりに人工林を下ると、大勢作業の人たちが休んでいた(ちょうど昼休み)。現在道普請をしており、この後間伐か材出しの作業が行われるのだろう。伐採作業中は危険なので、ハイカーを立入禁止にする。その場合、奥多摩などでは「伐採作業中につき通行禁止」札がかかるので、ハイカーにもわかり納得する。単に立入禁止だと、道迷いしやすい初心者はやめてほしいが、自己責任の熟達者は見逃す的な場所に見える。なんか悪いことしたなあと思いつつ、おかげでハイウェイのようにいい道をさっさと下る。





 ずいぶん早く林道に出た(左上)。すぐ脇に軽トラが停まり、地元の人らしき初老男性が二人休んでいた。しいたけのホダ木をとっているという。鹿見なかったか?今民家にまで下りてきている、10頭くらいいる、蛭も運んできてこっちにも蛭が増えたという。お茶をやっているが、夏刈っていると足に蛭がつく。一人が蛭が沢山ついてその晩熱が出た、医者へ行くと蛭のせいだと言われたといい、もう一人があれは食われすぎだ、という。麻酔出すから気づかずに食われる、食い逃げだ、食わない蛭は増えないが、血を吸う蛭はオスメス一緒だからすぐ増えるという。林道を頻繁にトラックが通るので、どこまで行くのか聞くと秦野峠へ行き虫沢まで行くという。
 林道を行くと「こもつり橋」とある。あれ?と思い地図で確認すると、南東尾根ではなくもっと西の尾根を下ったことがわかった。作業道があまりに明瞭で、途中で南東尾根への道からはずれてしまったようだ。方角チェックすべきだったが、あそこまで道が明瞭だと普通疑わない・・・。初志貫徹したいなら、作業道には要注意、と毎回思うのだが・・・。林道歩きが長くなったが、まーいーや、とする。

 ところで寄集落は田代から先、しばらく集落がない。昔は交通が非常に不便なところだったろうと思う。山小屋で一緒になった人の話では、古代朝鮮半島からの移住者がここを開拓して住んだそうだ、と言っていた(埼玉の高麗もその話)。花じょろ道など、新松田方向よりも低山の峠を越えた玄倉側とのつながりのほうが強かったのだろう。





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